Mackey, A. (1999). Input, interaction, and second language development: An empirical study of question formation in ESL. SSLA, 21, 557-587

今、とある事情で、インタラクションの勉強をする機会をいただいています。来年の研究にもぜひつなげようと思っていますので、少しずつ考えたことを、備忘録を兼ねて書いていきたいと思います。

まだ、読みかけですが、上記の論文を読みました。この論文ではオーストラリアの語学学校(と思われます)の学習者を対象に、インタラクションが疑問文産出の発達にどのような影響を及ぼすかを調査しています。実験参加者をインタラクション、レディネス無しインタラクション、観察(observation)、事前修正インプット(premodified input)、統制群の5グループに分け、information gap taskを行いました。事前テスト、事後テストにはspot the difference taskを、treatmentには様々なinformation gapタスクを行いました。目標形式は上記の通り疑問文の形。先行研究から疑問文の発達段階に関する指標を用いて、stage 2~stage6までの疑問文の中から、どの程度高いステージの疑問文を表出できるかを分析しています。事前テストはトリートメントの1日前、事後テストはトリートメントの1日後、事後テスト1の1週間後、事後テスト2の3週間後に行いました。

結果、以下のことが報告されました。まず、インタラクションを行ったグループは、そうでないグループに比べてより発達段階の高い疑問文を産出しました。また、インタラクションを行ったグループに関して、事前テストから事後テスト2までは有意差は見られませんでしたが、事後テスト3において、テスト間に有意差が見られました。

これらの結果から、①インタラクションに参加することは、第二言語習得を促したこと、②インタラクションを観察することは、インタラクションの理解には効果が見られましたが、インタラクションを行ったグループに比べて、より上位の発達段階の疑問文を産出するには至らなかったこと、そして③インタラクションの効果は、インタラクションを行った直後ではなく、しばらく後に表れること、を示唆しました。

インタラクションが第二言語習得を促すメカニズムを説明する理論としては、Longのインタラクション仮説が頻繁に用いられます。この仮説を、誤解を恐れずに簡潔に表すと、インタラクション中で行われる意味交渉(negotiation of meaning)というプロセスが、学習者に対して否定フィードバック(形式に焦点を当てたフィードバック)を与えること、そしてインプットをより理解可能にすることが挙げられます。しかし、言い換えれば、インタラクションにより第二言語習得を促すためには、意味交渉を行い、その中で学習者に否定フィードバックを与えたり、より理解可能なインプットを与える必要があると言えます。そして教室内の学習環境の中では、その役割は教師、または、より習熟度の高い学習者にあると言えるでしょう。

しかし、日本の中学校や高校のような、多くの学習者対1人または2人の教師という構図の学習環境で、果たしてどの程度教師がそのような役割を担うことができるのかは疑問です。よく、教室内で行われるインタラクションとしては、ある事柄について、教師が学習者全体に問いかける、そして、ある学習者を指名して、同じ質問をし、答えを求める、答えに対して何らかの働きかけ(フィードバックを与えたり、さらに質問をしたり、コメントをしたり)をする、という形が見られます。このようなインタラクションには上記のインタラクション仮説で述べられているような、意味交渉を行う機会があり得ると言えますが、問題は、どの程度の量の意味交渉、そしてインタラクションを1時間の授業内で行えるかだと思います。また、上記のMackeyの論文では、インタラクションを観察しているだけでは、インタラクションに参加するのと同程度の効果は得られないとの指摘もあるので、教室内でインタラクションに参加できない(していない)学習者にどの程度メリットがあるのかも疑問になります。

また、アウトプットの量を確保するために、学習者同士のペアワークを取り入れる方法もよく見られると思います。上記の通り、アウトプットの量を確保したり、ある形式を使う練習としてペアワークは効果的な手法に思えますが、インタラクション仮説の視点から考えると、学習者同士のインタラクションで意味交渉が起こっても、どの程度、より理解可能なインプットを与えたり、否定フィードバックを与えることができるかどうかは分かりません。インタラクション仮説だけを軸に考えると、学習者同士のインタラクションがどのような効果をもたらすのかもよく分かりません(誤解のないように、決して学習者同士のインタラクションを否定している訳でなく、あくまでも、インタラクション仮説に乗っ取って考えた場合の考えを述べています。)

インタラクション1つとっても、様々なことを考えていかなくてはならないことをこの論文を通して感じました。第二言語習得研究ですごく有名な仮説として、Krashenのインプット仮説、Swainのアウトプット仮説、Longのインタラクション仮説があると思いますが、あくまでも「仮説」であって、インプット、アウトプット、インタラクションについての包括的な理論ではないということ、考えればまだまだ調べなければいけないことがあると痛感しました。

的外れなことを書いているのかもしれませんが、このようなことを今日論文を読みながら考えました。先述の通り、備忘録を兼ねて載せておきます。

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