ブログ更新がしばらく滞りました。今日は久しぶりに論文のレビュー。
読んだ論文:
Qi, D.S., and Lapkin, S. (2001). Exploring the role of noticing in a three-stage second language writing task. Journal of Second Language Writing, 10, 277-303.
習熟度の異なる学習者を対象に、ライティングにおけるアウトプットの役割を検証している。ケーススタディ。参加者は大人の英語学習者2名。タスクは、本論文にはナラティヴとしか書かれていないが、appendixを見る限りpicture descriptionタスクのようなタスクを実施したように思われる。参加者はまず、与えられた絵を用いてライティングを行った(ステージ1)。その際に、学習者が気づいたことを調べるために、think-aloudを行った。その後研究者が、書かれた作文を集めて修正した(後に提示するネイティブのモデル作成のため)。ライティングの4日後に学習者は、自分たちが書いた原稿と研究者によって修正された原稿を与えられ、その二つを比較することを行った(ステージ2)。その際に、学習者が気づいたことを調べるために、think-aloudを行った。think-aloudの様子はビデオで撮影されており、草案とモデルを比較した後に、学習者はthink-aloud時のビデオを見ながら研究者の質問に答えていった。ステージ2の2週間後に、学習者はポストテストとして、自分たちがステージ1で書いた草案を修正するタスクを行った。
データ分析として、think-aloudで得られたプロトコールをLRE (Language-Related Episodes)の観点から分析した。LREは語彙、形式、談話面の3つに分類された。
その結果以下のことが報告されている。まず、ライティング中に起こったLREの約半分がステージ1の段階で解決され、もう半分は正しく解決されていなかった。また、習熟度の高い学習者の方が習熟度の低い学習者よりもLREの数が多かったことを示唆している。言い換えれば、学習者の習熟度によってタスク中の気づきの量に差があることを示唆している。同様の示唆は他の研究でもされており、習熟度は気づきの量に影響を与える要因になり得る可能性があるようである。
次にステージ2のLREを分析した結果、修正を受け入れた理由まで述べているLREが約半分近く見られたものの、半分以上のLREは理由なしに受け入れられていた。特にlow-levelの方の学習者はこの差が顕著で、そのことから、習熟度の低い学習者は、与えられたモデルから自らの中間言語と目標言語の違いの性質まで理解することが難しいことを示唆している。
しかしながら、分析したデータからは、LREを受け入れた理由までは分からなかったのかもしれないが、それを以て中間言語と目標言語の違いの性質まで理解していないということを断定することは難しいと思われる(もちろん本研究では断定することまではしていない)。Schmidt (1990)でもnoticingはverbal reportできるという性質を持っているけれども、verbal reportできないこと=気づいていないことではないということが述べられている。この点は研究の方法を再考することで解決できるのかもしれない。
次にポストテストについてだが、ステージ2で修正を理由を以て受け入れているものの70%以上は修正に貢献していたと述べている。
ケーススタディを自分で行ったことがないので、詳しくは言えないが、せっかくケーススタディをしたのならば、より質的な面を調査できた可能性があるのではないかと思われる。この点は自分ならどのような観点でデータを分析したかをもっと考えてみたい。