「まとまった英文を書く指導」福井県英語懇話会冬季シンポジウムより

12月23日に福井県英語懇話会シンポジウムに参加してきました。今回は3名の先生方(中学校・高校・大学)が「まとまった英文を書く指導」についての実践を発表されました。大変刺激的で明日から(といってももう冬休みですが)でも使用できる指導法を提案され、勉強になりました。

中学校の先生からはまとまった英文を書く指導についての指導法をこれまでの実践からピックアップされて紹介していただきました。高校の先生からは各単元において要約を書かせるためにどのような指導を行ってきたか、大学の先生からはプロセスライティングを実際に行った手順や学習者の感想を報告していただきました。

先生方の発表を聞きながら自分なりに「学習者にまとまった英文を書いてもらうためにどのように指導できるか」を書いていきたいと思います。シンポジウムの段階ではmisunderstandしていた部分があるのですが、「まとまった英文」という時には、「ある程度のまとまった量がある」という量的な観点と「まとまりのある英文」という質的な部分の両方があることを最初に明記します。

「適切な」支援を行う
お題を与えていきなり「さあ書きなさい」では何を書いて良いか、どのように書いて良いか分かりません。「書く」という行為はあくまでも最終行為ですから、何を書くのか、どのように書くのかを適切に支援しないといけません。

英作文における「支援」というと、真っ先に思い浮かぶのは言語使用の正確さに焦点を当てた添削だと思います。いわゆるエラーコレクション(error correction: ER)ですね。ERが悪いとは 言いませんが、それ以外の支援が「まとまった英文を書く」ためには必要になるでしょう。

「まとまった英文を書く」という観点からは、言語形式面だけではなく、内容面(content)の部分を活性化させる支援と構成面(structure)の支援が必要だと思います。内容面に関してはマインドマップ、グループ・ディスカッション、教師主導のブレインストーミングなどがあると思います。構成面に関してはモデルを与えたり、パラグラフの構造を解説したり、フィードバックを与える(これは書いたあとになってしまうかもしれません)などの方法があります。いずれにせよ、内容面、構成面をきちんと学習者に準備させた上で「じゃあ書きましょう」ともっていかないと、力のある一部の学習者しかタスクを達成できないかもしれません。

ちなみの上記の添削については、ERだけではなく、ポジティブなコメントを添えることで学習者の自己効力感を刺激したり、内容面について「○○についても書き加えてみたら?」などというフィードバックを与えることも可能でしょう。添削については添削=ERではなく、幅広い支援ができることを常に覚えておく必要があると思います。

1つの英作文に誠実に向き合う
何回も書かせるということです。re-writingが重要だという意見はシンポジウム時にフロアの先生からも提案がありましたが全くもってその通りだと思います。通常まとまった英文を書く際に、量的にも質的にも満足できるものを一発で書くというのは相当の技術が必要とされます。

例えば僕は某学会でよく8ページの紀要を書いて投稿させていただいていますが、その際の8ページを一発で書き上げてそのまま投稿する、ということはまずありません。一度とにかく書いてみてあとはreviseの連続です。全国英語教育学会でOrtega先生もおっしゃっていましたが、reviseすることで論文が洗練されていきますし、reviseをどれだけ真剣に行ったかでその論文の質が変わっていくと思います。

教室内の英語教育とはちょっとずれてしまった例かもしれませんが、同じことは言えるのではないでしょうか。特に中学校や高校では授業の進度や教員の仕事量を考えると、同じ英作文を何回も書かせて指導するということは実践性という面においては難しいかもしれません。それでも教員も学習者も根気良く一つの英作文に向き合うことで量的にも質的にもまとまった英作文に近づけると思います。この考え方は大学の先生からの報告にもあったプロセスライティングの考え方と同じであると思います。

まとめ:基本的だけどやっぱり重要
上に挙げた支援というのは基本的なものであると同時にちょっとでも教えた経験がある先生だと当たり前のように知っている内容で、取り立てて書き出すものではないかもしれません。しかしながら、実際に授業で英作文を扱った時に上記の手法をすべて駆使して指導できる教師というのは稀であるように思いますし、僕もできていません(反省)。そういった意味では記事を読んでくださった方がもう一度自分の指導を振り返っていただけると幸いです。

余談ですが、個人的には英作文指導の研修をぜひALT対象に行って欲しいなと思います。彼らは英語に関しては一種のロール・モデルでありますし、ほとんどのALTの先生方は学習者の英作文にきちんと向き合ってくれています。ALT任せにしましょうと言っているのではなく、ALTとの分担作業がスムーズにできるためにも、研修を行ってそういったスキルを身につけてもらえるとありがたいですね。

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