さようなら2016年。そして2017年へ。

明けましておめでとうございます。2017年になりました。今年もよろしくお願いいたします。

2016年は何と言っても『はじめての英語教育研究』を執筆、出版できたことが非常に大きな出来事となりました。きっかけは中部地区英語教育学会課題別研究プロジェクト「英語教育研究法の過去・現在・未来」に入れていただいたことでした。あの時声をかけていただかなかったら今の自分はありません。このプロジェクト、そしてこれまでに担当させていただいた「研究法セミナー」講師の経験をとおして、英語教育研究法の基本を勉強させていただくことができました。『はじめての』の執筆の際には、自分以外の先生から本当に忌憚のない意見をたくさんいただき、先輩研究者の文章執筆のイロハを身をもって体験することができました。そして、一冊の本を作るということがどれだけ大変なことなのかも身をもって知りました。大変よい勉強でした。

その他には全国英語教育学会、中部地区英語教育学会で口頭発表をさせていただきました。今年の頭には出版されるものがいくつかありますが、単著で書いたものはまだ出版が決まっていません。某所でリジェクトをもらってから色々な方のアドバイスを得て自分なりに納得できる形を模索しましたが、どうなることやら。結果を謙虚に待ちたいと思います。

お仕事の面では2年生の担任をさせていただいています。42名の個性的で将来性豊かな学生さんたちと一緒な時間を過ごせることは何にも代えがたい貴重なことです。正にこの仕事をしていたよかったと思う瞬間です。いわゆる「学校教員」ではなくなってしまいましたが、教員という仕事は正に自分の原点だなと時折実感します。2年生の担任は残り3ヶ月(実質2ヶ月)となりますが、全力で向き合っていきたいと思います。

プライベートな面ではたくさん読書したり、映画をたくさん見たりすることを目標としていました。しかしながらこちらはほとんど叶わず。こうした時間も含めて上手に時間の管理をしていくことが今年度の課題になりそうです。と、ここまで書いて昨年の振り返りを読んだら、昨年も全く同じことを書いていました。進歩していない証拠なので今年こそはきちんと管理したいと思います。

今年はもっと目標を絞り込んで、一つ一つの結果をきちんと出すように心がけていきたいです。自分の限界を自分で決めることがよいとは思いませんが、自分のキャパシティを超えて仕事をするとどれだけ結果がついていかないかも十分経験しました。今年は「ToDoリスト」に加えて「Not To Doリスト」も作って、自分の本当にしたいことにきちんと目標を定めて取り組んでいけたらと思います。

福井県英語教育懇話会にて発表しました。

2016年11月19日(土)に、福井大学にて福井県英語教育懇話会11月例会が行われ、

高専におけるタスクを中心とした授業の試み

という題目で発表させていただきました。現在取り組んでいる授業も含めた実践についてお話させていただきました。フロアの方々からは有益なご意見をいただき、これからの授業に活かせそうです。ありがとうございました。

大学生ミライと統計について考えてみた

ずっと積読していた本を2冊読み終えた。
小塩真司 (2013).『大学生ミライの統計的日常ー確率・条件・仮説って?』東京図書
小塩真司 (2016).『大学生ミライの因果関係の探究』ちとせプレス

本書は、主人公の大学生ミライと、ミライが所属する心理学科の先生である江熊先生の2人の会話を中心に統計の基礎的な概念について対話形式で説明がされていく統計の入門書である。2冊目の『因果関係の探究』の方から読み始め、面白くて読了後すぐに1冊目の『統計的日常』を手にとった。2冊とも分量はそれほど多くないので、その気になれば1、2日で2冊とも読み終えることができる。

1冊目の『統計的日常』は、確率の基礎概念について、2冊目の『因果関係の探究』は統計的仮説検定の説明をベースにしながらも統計手法の解説にとどまらず、関係を調べるための条件や難しさについて書かれている。共通しているのは、2冊ともとても分かりやすく具体的で、初学者のレベルにきちんと降りて話を進めてくれている点である。数値の求め方一つにしても、式を提示するだけではなく、計算の過程をきちんと示してくれたり、記号の意味をさりげなく説明してくれているのでとても親切。これまでも統計手法の入門書にはいくつかあたったが、式を意図的に提示せずに説明しようと試みたり(それはそれで分かりやすかったが)、逆に式を提示するのみでその前後の解説が十分でなかったりすることが多々あり、ユーザーとして統計手法を使うことはあったけどもやもやしている面もあった。この2冊でそれが全て払拭されたわけではないが、かなり理解が進んだ気がする。

特に感服したのが、分散分析のところ。2冊目の『因果関係の探究』では2要因の分散分析の主効果や交互作用の説明がされている箇所があるが、ここはまさに『はじめての英語教育研究』を執筆する際に自分が直面した箇所でもあった。あのときも自分ができる限りのことはしたつもりだったが、本書を読んでいると、それがまさに自分が書きたかった理想のものだったと気づかされる。グラフの様々なパタンを提示し、主効果が見られる場合、交互作用が見られる場合など一つ一つ丁寧に解釈して説明をするのは、並大抵の理解では不可能である。読者の目線に降りて書くということがどういうことかを勉強することができるとてもよい機会となった。

『はじめての英語教育研究』を読んで、量的アプローチ、特に調査や実験を行おうとする方には本書2冊をぜひおすすめしたい。卒論や修論とダイレクトに繋がりそうなのは『因果関係の探究』の方だが、基礎からの学び直しという意味とストーリーを時系列に追っていくという意味で、1冊目から読むとよいだろう。この後『外国語教育研究ハンドブック』や『英語教師のための教育データ分析入門』を読むとかなり理解が深まりそうである。しかし、統計手法について学習しようと思うと、親切で分かりやすい本が本当に増えた。いい世の中になったものだ。